日本が宇宙開発分野で行うべき事業の、理念及び基本方針を定める法律。2007年1月に自由民主党・河村建夫衆議院議員らが法案を提出し、継続審議扱いが続いた後の08年1月、第169回通常国会で審議が始まり、同国会で5月に成立した。
国が行う宇宙開発を、「国民生活の向上及び経済社会の発展に寄与するとともに、世界の平和及び人類の福祉の向上に貢献することを目的とする」(第1条)と規定するとともに、「我が国の安全保障に資するよう行われなければならない」(第3条)と、安全保障分野での宇宙開発と宇宙利用を明記したことが特色。これまで日本は、国会決議により基本的に安全保障分野での宇宙開発・宇宙利用を禁止してきたが、そこから一歩踏み出すことになる。
その他、産業の振興(第4条)、宇宙への夢の実現及び人類社会の発展(第5条)、国際協力(第6条)、環境への配慮(第7条)などをうたっている。
制度面では、現在の文部科学省など官庁中心の体制を変革し、内閣に日本宇宙開発の司令塔となる「宇宙開発戦略本部」を設置し、内閣総理大臣の下、宇宙開発担当大臣を任命し、「宇宙基本計画」を立案して実行するとしている。
附則では「宇宙開発利用に関する機関について、その目的、機能、業務の範囲、組織形態の在り方(中略)について検討を加え、見直しを行う」と明記し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)など、既存の宇宙関連機関を見直すこととしている。見直し作業は、08年に自民党・公明党連立政権から、民主党政権へと政権交代が起きたこと、また権限を削減されることになる文部科学省と、出向者で内閣府を押さえて権限拡大を狙う経済産業省とが激しく争ったことから、大きく遅れた。結局、12年7月に内閣府・宇宙戦略室を中心とする新たな宇宙開発体制が発足した。(→「日本の宇宙開発体制(2012年7月以降)」)