2012年7月、日本の宇宙開発体制は内閣府を中心とする形に大幅に刷新された。これは08年8月施行の宇宙基本法に基づくもので、従来の体制は01年の省庁統合により、かなり役割分担があいまいになっていたためである(→「日本の宇宙開発体制(2012年7月以前)」)。
新体制では、内閣総理大臣を長とし、閣僚をメンバーとする宇宙開発戦略本部(08年8月設置)が最高意思決定機関となる。行政組織としては内閣府・宇宙戦略室が設置された。また、同じく内閣府に、内閣への諮問機関である宇宙政策委員会が設立されている。7人の有識者からなるこの委員会は、5年ごとの中期計画である宇宙基本計画を審議し、また各年度の各官庁の計画が宇宙基本計画に合致するものかを調査し、内閣へ意見・勧告を出す権限を持つ。なお、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、従来文部科学省と総務省の管轄下にあったが、新体制では、監督官庁として内閣府が入り、また法律改正を行わずに省令によって監督官庁を追加できるようにした。
要約すると、01年以前は、行政側は実質的に科学技術庁が権限を握っていたものが、組織のありようはそのままで内閣府に移行した形となっている。ただし、(1)内閣府・宇宙戦略室の主要ポストは経済産業省からの出向者が占めている、(2)旧宇宙開発委員会の委員は常勤であったのに対して、現宇宙政策委員会の委員は全員非常勤、といった点から、実質的には、文科省(旧科技庁)から経産省に宇宙開発の行政権限が移ったと考えることができる。実際、08年の宇宙基本法成立から今回の体制刷新まで4年近くかかった理由の一つは、権限をめぐって経産省と文科省が激しく衝突したためであった。