有機半導体、導電性高分子材料を用いたトランジスタの研究は1980年代初頭から一時期盛んに行われたが、有機材料のもつ低移動度、高抵抗の特性が反映され、実用的な観点からはあまり注目されなかった。しかしアモルファスシリコン、ポリシリコンに匹敵する移動度をもつ有機材料を用いたトランジスタが報告されるようになって、有機材料の有する軽量・柔軟性などの特長を生かしたプラスチックトランジスタなど、全有機系電子デバイスの開発研究が再び活性化している。一方、スマートカード、情報タグ、電子ペーパー、有機ディスプレー用の駆動素子などを意図した研究も進められている。また最近では、有機半導体のみならず、金属、絶縁体膜をすべて塗布または印刷法で電子回路を作製するプリンテッド・エレクトロニクスが注目され、軽量・柔軟性に加えて、低コストで大面積の有機電子回路を作製する研究が活発に進められている。