従来のレジストは、紫外線や電子線などのエネルギー粒子1個で一つの化学結合を変化させる感光が行われてきたが、大幅に感度を向上させるために、1980年代前半に当時IBMの伊藤洋、グラント・ウイルソン、ジャン・フレシィエにより発明されたのが化学増幅レジストである。この技術は2013年の日本国際賞(国際科学技術財団主催)の対象になったが、伊藤氏は惜しくも09年に亡くなったため、受賞できなかった。
原理は、1つの紫外線粒子で複数個の化学反応を起こさせるために、まず酸発生分子が露光によりエネルギーを受け取ってプロトン(水素イオン H+)を発生し、続いてそのプロトンが熱拡散によりレジスト中を移動しながら複数のレジスト分子と反応して露光を行うというもの。10個の分子と反応すれば通常のレジストに比較して感度は10倍になるため、大幅な高感度化が可能になる。近年のArFエキシマレーザー露光などのように、エネルギー密度が低いリソグラフィー技術の場合は特に高感度化が必須になるため、リソグラフィーに革命をもたらした非常に重要な発明である。