低温から高温に熱を輸送する装置で、低温熱は冷房・冷凍に利用され、高温熱は暖房・給湯に利用される。その原理は、基本的には凝縮器と蒸発器で構成されており、凝縮器では暖房、蒸発器では冷房が行われる。家庭などで使われているヒートポンプは4方向バルブによって切り替えることで、室内機だけで冬は暖房、夏は冷房が行えるようになっている。蒸発器では作動媒体の蒸発による吸熱現象、また凝縮器では凝縮による発熱現象が生じており、低温から高温に熱をくみ上げるには仕事が必要となる。仕事の駆動方法によって、ターボやスクリュー冷凍機のような圧縮式と、吸収式や吸着式といった熱駆動とに分けられる。冷媒には、フロン、アンモニア、メチルクロライドといったガス化しやすい物質が用いられているが、フロンはオゾン層破壊から使用が禁止され代替フロンの開発が進んでいる。ヒートポンプは外部から仕事を与えることで熱を生産しており、その熱サイクルは発電技術やガソリン機関などの熱機関の逆サイクルになる。発電技術の熱効率は、得られる仕事を投入した熱量(燃料投入量)で割ることで求まる。ところがヒートポンプの性能はその逆になり、得られる熱量を投入した仕事で割ることによって表される。そのため、ヒートポンプの性能は効率とはいわずに成績係数(COP coefficient of performance)と呼ばれている。成績係数は電動式ヒートポンプで3~5になっており、すなわち使った電気量の3~5倍の熱エネルギーを利用することができる。このことは、電気の発電効率が通常40%程度であることから、熱を供給する効率は総合的に見て120~200%にもなることを意味している。100%を超えた部分のエネルギーは、大気、水、地中熱から得られる再生可能エネルギーである。欧州議会では、2008年12月に「再生可能エネルギー推進に関する指令案」が採択され、ヒートポンプが再生可能エネルギーであることが明記された。また、ドイツでも09年1月から「再生可能エネルギー熱法」の中でヒートポンプを再生可能エネルギーとして定義している。