200℃以下の熱水の熱を、アンモニアやプロパンなど水よりも沸点の低い媒体へ熱交換するサイクルと、この媒体の蒸気でタービンを回転させるサイクル、この二つによって発電する方法。バイナリー発電と簡略化して呼ばれることもある。通常ならば蒸気化が難しい低温の熱源でも、エネルギーを取り出し電気に変換して利用できるため、地熱エネルギーの新しい発電方式として需要が高まっている。バイナリー発電は、従来の地熱発電よりも発電出力が小さいため設備規模も小さくなり、景観を破壊しないことから、環境省では自然公園法や温泉法に基づく開発許可手続きを簡素化する検討を進めている。
地熱資源の大半は、蒸気と熱水が混合している熱水卓越型であり、200℃以上の地熱水から気水分離器によって蒸気を取り出し発電するシングルフラッシュ法が、最も一般的な発電方式である。ダブルフラッシュ法は、分離された熱水を減圧沸騰させて蒸気を生産し発電する方式である。バイナリーサイクル方式は、これらの方式に比べて発電効率は劣るが、エネルギー有効利用の面から普及が期待されている。
技術的課題としては、発電効率向上の他に、熱水の温度低下に伴って配管などに析出する二酸化ケイ素(SiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)などのスケール(酸化物)の除去、地熱水中に含まれる環境基準値以上のヒ素(最大で数ppm程度)など有害成分への対策などがある。