物理的に与えられた物体や光の量子状態を、古典情報の通信のみで遠方に再現すること。事前準備として、エンタングルした系(→「エンタングルメント」)を量子通信路により送信側と受信側に配布しておくことが必要である。この準備により、古典通信路しか使用できないときも量子情報を送ることができる。パラメトリック蛍光(parametric fluorescence パラメトリック下方変換で自発的に発する光)によるエンタングル光子対を用いた実験や、スクイズドステート(squeezed state 通常は、任意の位相成分とそれに垂直な位相成分の不確定量が等しいが、特定の位相に関してはそれが等しくないような最小不確定状態)実験と類似の機構による実験がなされている。原子の量子状態を数km離れた原子に移す量子テレポーテーションの実験も成功しており、さらに複雑な分子を用いた量子テレポーテーションが期待される。離れた地点間でのテレポーテーションに限らず、量子コンピューターの中の動作原理として量子テレポーテーションは量子情報処理の要素技術であり、理論的ツールとしても重要な概念になっている。