系の量子状態を記録・再生するのに必要な物理的資源の総称。また、その物理系が「現にある」量子状態。たとえば、8個のエネルギー準位を持つ量子井戸にとらわれている電子の状態を表すには、三つの光子(→「単一光子素子」)の偏光状態が必要である。その電子が「5番目のエネルギー状態にある」という情報は、3個の光子では、5を二進数で表した「101」に対応する「縦偏光、横偏光、縦偏光」と表される。この例のように、状態が既知であれば、「101」という古典情報として紙や普通のメモリーに記録できるが、その電子の量子状態が未知の重ね合わせ状態(→「重ね合わせの原理」)や他の系とエンタングル(→「エンタングルメント」)した状態であるときは、実際に三つの光子がメモリーとして必要である。このような量子情報を物理的に加工処理することを、量子演算(quantum information processing)または量子情報処理(quantum information processing)と呼ぶ。たとえば、一つの量子ビットに対する操作であるアダマール変換(Hadamard transform)や、二つの量子ビット間の操作であるC-NOT(制御NOT controlled-NOT)などがある。任意の量子情報操作は、この二つのエレメントの適当な組み合わせにより実現される。一方、これらを要素技術として用いる、目的を特定した情報処理のことも量子情報処理と呼ぶ。量子暗号、量子コンピューティングなどである。