グラフェンはギャップの無い半導体であり、電界を加えることにより、電子を蓄積することも、正孔を蓄積することもできる。どちらの場合も電界により伝導度を制御できるので、トランジスタとして働く。シリコン基板上にシリコン酸化膜を形成し、その上にグラフェンを張り付けて、シリコン基板側から電界を加えるタイプのトランジスタが多いが、グラフェン上に絶縁膜を形成し、上面にゲートを付けるトランジスタも実現されている。グラフェン薄膜自体は機械的に強靭(きょうじん)で、曲げることが可能で、さらに透明であることから、グラフェンを張り付ける基板を工夫することで、フレキシブルデバイスや透明デバイスに応用することもできる。また、グラフェン表面に吸着した化学種によるトランジスタ特性の変化を利用することで、センサー応用も考えられている。この大変魅力的なグラフェントランジスタにも、グラフェンのバンドギャップ(band gap 電子が存在できないエネルギー領域)がゼロであることに由来する「完全な絶縁状態(OFF状態)が実現できない」という欠点があり、集積回路応用に向けた課題となっている。この課題の克服に向けて、グラフェンからナノ構造を作製し、量子サイズ効果を用いて一次元、ゼロ次元閉じ込めを実現し、バンドギャップを形成する方法や、二層グラフェン構造に電界を加えてバンドギャップを開かせる方法などが提案され、研究が進められている。