ナノテクノロジーの進歩により、医療・治療用のナノ粒子の研究が進んでいる。標的の細胞まで薬物を運搬する目的で開発されているドラッグデリバリーシステム(DDS)におけるキー物質であり、表面にPEG(ポリエチレングリコール)や糖鎖、ペプチド等でコーティングすることで、特定の標的のみに反応するよう設計されたものや、標的部位まで反応せずに到達できるよう設計されたもののほか、細胞がそれ自身を取り込む性質を利用する可能性についても検討されている。使用されるナノ粒子には、デンドリマー等の高分子や脂質二分子膜を利用したリポソーム(脂質小胞体)、金属、磁性体、さらには生分解性物質などが報告されており、薬物を粒子に付着または、カプセル化することで使用することが多い。薬物に頼らず、熱で標的細胞に対処する磁気ナノマーカーの取り組みや、蛍光量の変化により0.3℃の温度差を検出可能なナノ粒子を用いたがんの検出などが報告されており、さまざまなアプローチからその医療・治療面での活用が期待されている。