ナノスケール(nm : 10-9m=10億分の1mレベルのスケール)の車体に回転するナノスケールの車輪がついている構造をナノカーと呼ぶ。車体と車輪を結ぶ分子結合が1本の場合、分子結合が回転できることを利用することで、車輪のみが回転する構造が可能になる。たとえば、三重結合を介してベンゼン環を「H」型に結合したものを車体とし、それに球形の分子のフラーレンを取り付けて車輪に見立てたものなどが試作されている。実際に、平坦な基板の上に置いて熱をかけると、回転しやすい方向へ動き出すことが確認されている。ナノプローブ(ナノスケールの針)で押すことにより、確かに進行方向には動くが、横方向にはすべらないことが確認でき、車輪の回転によりナノカーが動いていることがわかる。また、分子モーター(モーターのような機械的運動を行う分子複合体)を車輪部分に取り付け、ナノプローブから電圧を与えることで動かすことができるナノ四輪駆動も実現されている。現時点では、ナノテクの面白さをアピールするおもちゃの側面が大きいが、将来的には車体にナノドラッグを積んで目的地まで運ぶ役割が期待されている。2017年4月には、フランスのトゥールーズで、全長100nmのサーキットを走る世界初の「ナノカーレース(NANOCAR RACE)」も開催され、日本からも2nmのナノカーが参加した。
なお、同様にナノスケールで経路に沿って動くものもあり、ナノ電車と呼ばれることもある。