レーザーは、光を出す活性領域(active region)とその光を反射して閉じ込める共振器(resonator)から構成されている。この共振器に、屈折率が光の波長と同程度の寸法で周期的に変調されたフォトニック結晶を用いることで、活性領域の体積が小さくても発振するレーザーを実現することが可能になる。(1)光を出す活性領域にインジウム・ガリウム・ヒ素・リンの混ざった結晶(InGaAsP)を設け、(2)共振器にインジウム・リン(InP)薄膜に規則正しくナノスケールの穴を開けた構造をもつフォトニック結晶を用い、(3)このインジウム・リン薄膜を通して電流を流し込むことで、室温において10μA(マイクロアンペア μは10-6=100万分の1)程度で発振するレーザーが実現された。このフォトニック結晶レーザーは、シリコン集積回路上に載せることもできる構造であり、マイクロプロセッサー内のデータ転送にレーザー光を使う新しい技術に道をひらくものとして期待される。光励起ではあるが、光を出す領域に単一の量子ドット(電子が三次元のどの方向にも量子サイズ効果で閉じ込められた構造)を用いた単一量子ドットレーザーでも、フォトニック結晶を共振器に用いることが実現されている。