透明でありながら電気を通す電子材料。ディスプレーやタッチパネル、太陽電池などに不可欠なものであり、これまで酸化インジウムスズ(ITO ; indium tin oxide)が透明電極膜の主流として用いられてきた。しかし、製造には真空プロセスが必要で、素材自体の柔軟性に欠け、さらに希少資源であるインジウムを用いる問題があった。この問題を解決する手法として、カーボンナノチューブや銀のナノチューブの網目構造を用いる手法が注目されている。これらのナノ構造は導電性に優れるため、この網目構造は導電性の電極として振る舞う。さらに、多くの隙間があるため、十分な透明性が確保できる。構造から明らかなように、柔軟性にも優れ、ウェアラブル電極としても使用可能である。大気中で大面積に、しかも任意のパターンに電極を形成できるために、導電性ナノチューブを分散させた溶媒をインクジェットでプリントするナノインクジェット印刷の手法も盛んに研究されている。プラスチック上に良好な透明電極を形成することができると応用範囲が大きく広がることから、プラスチック上での低温形成が試みられており、いかに低温で溶媒を取り除き、ナノチューブ間の電気的接触を改良し、導電性を上げるかにさまざまな工夫が取り入れられている。