単層の炭素やシリコンのベンゼン環構造が二次元平面上に並んだものがグラフェンやシリセンだが、この原子層薄膜を同じIV族のゲルマニウム(Ge)やスズ(Sn)に置き換えたものがゲルマネン、スタネンである。その形成は容易ではないが、金や銀の表面にゲルマニウムを成長させるとゲルマネンが現れ、Bi3Te(テルル化ビスマス)の上にスズを成長することでスタネンが現れることが示されている。ゲルマネンはゲルマニウムの単層薄膜であり、二次元状態への電子の閉じ込め効果がある。このため、電子が価電子帯から伝導体に移動するのに複数段階を経る間接遷移が、直接移動する直接遷移になる可能性があり、発光素子への応用も期待される。
炭素、シリコン、ゲルマニウム、スズと同じIV族でも元素の周期律表で下に行くほど重い元素になるため、相対論的効果であるスピン(自転のようなもので、磁性の源)と軌道運動の相互作用が強くなる。この結果、グラフェンでは実質的にゼロであったバンドギャップ(band gap 電子が存在できないエネルギー領域)が次第に開くことが理論的に予想されており、トポロジカル絶縁体になるとする予想もある。スタネンの場合はバンドギャップが室温の熱ゆらぎよりも大きくなる可能性があり、新規材料として魅力的である。
なお、ゲルマネン、スタネンが水素化された二次元薄膜がゲルマナン(germanane)、スタナン(stanan)であり、例えばゲルマナンはゲルマニウム層の間にカルシウムが入ったゲルマニウム化カルシウム(CaGe2)薄膜からカルシウムを抜いて水素と置き換えることで作製される。