カナダのケベック州にある直径100キロメートルのクレーター。カナダでは地質時代の天体衝突でできたクレーターが多数あり、円形のくぼ地になっている。マニクアガン・クレーターを流れるマニクアガン川の下流にダムが建設されたため、現在は、リング状のダム湖になっている。2億1400万年前に大きな天体が衝突していくつもの巨大なクレーターが形成されたが、その中の一つである。このときの天体衝突で飛び散った物質が、岐阜県坂祝町の木曽川河床に露出する層状チャート層でみつかった。層状チャートは、厚さ数センチメートルのチャートの地層が重なってできた地層で、古生代ペルム紀からジュラ紀にかけて、太平洋の真ん中で堆積した遠洋深海堆積物である。プレートの沈み込みによって、日本列島の下に海洋プレートが潜り込んでいったが、このプレート上で堆積した地層が、陸側のプレートに付加してできたものである。こうしたプレートの沈み込みにともなって付加してできた地質体を付加体と呼んでいる。マニクアガン・クレーターから飛散した地層は粘土質で、衝突の熱で岩石が融けてできたスフェルールや白金族元素の一つであるイリジウムの濃度異常が発見されて、天体衝突で飛散した地層が発見された。その地層の堆積年代とカナダのクレーターの形成年代が一致した。6550万年前の白亜紀末にも大規模な天体衝突があり、恐竜などの生物大量絶滅(K/T境界事件)があったが、この衝突に際し、生物圏で大量絶滅があったかどうかはまだわかっていない。