日本で最初の小惑星探査機はやぶさが研究対象とした小惑星。2003年5月に打ち上げられたはやぶさは、05年9月、形状撮影に初めて成功した後、約3カ月、並走しながら撮影を続け、11月25日、29日に着陸し、微塵の採集を行った。イトカワは近日点が0.95天文単位、遠日点が1.70天文単位という地球接近天体(NEO)の一つで、比較的容易に探査機を送ることができることから研究対象に選ばれた。大きさは535×294×209mで、円筒状である。平均密度は1.9g/cm3と、地球の岩石・鉱物(2g/cm3以上)に比べて小さく、内部には隙間があるものと推察される。これは岩石が集合してイトカワが形成されたことを示唆する。10年6月、はやぶさから切り離された帰還カプセルはオーストラリアに落下し、回収された。同年11月、そこからミクロンサイズの微粒子が採取された。成分分析の結果、石質隕石の中でも鉄分の少ないLLコンドライトと呼ばれる隕石と酷似していることがわかった。これまでの光学観測から、イトカワはケイ素を主成分とするS型の小惑星であることが知られていたが、LLコンドライトとS型小惑星の関連が深まった。なお、イトカワは1998年、アメリカの小惑星探査計画LINEARにより発見されたもので、はやぶさ探査に際し、日本のロケット工学の先駆者糸川英夫にちなんで命名された。