科学技術基本法に基づいて政府が策定する具体的な科学技術振興政策。直近の5年間に実行する施策を定める。1996年度に第一期基本計画が始まり、2015年度までは第四期基本計画20年度までは第五期基本計画が実施されている。第一期計画では、競争的な研究環境の整備を柱に、研究者の流動性の増大、研究開発費の増加などが目指された。ポスドク1万人計画も、政策のポイントとされた。第三期計画では、「社会や国民に支持され、成果を還元する科学技術」が強調されるとともに、研究施設や装備の整備から、人材の育成・確保に力点が移された。第二期を引き継いで、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料が重点推進4分野とされ、推進4分野として、エネルギー、ものづくり技術、社会基盤、フロンティアを指定した。同時に、重点的に研究投資する62分野が選ばれ、国家基幹技術に、高速増殖炉サイクル、次世代スーパーコンピューターなどの5つのプロジェクトが指定された。第四期計画は、東日本大震災のために、閣議決定が年度を越えて11年8月末にずれこんだ。震災からの復興再生が基本方針に含められるとともに、グリーンイノべーションとライフイノベーションについては成長の柱として予定通り推進することとされた。従来のイノベーション政策の実効性が反省され、重点分野中心の投資から、社会の重要課題を抽出し、それを解決する形に移行した。原子力を対象に含むテクノロジーアセスメントへの取り組みが言及されたことや、高速増殖炉を利用した核燃料サイクルの記述が当初案から削除されたことが注目された。社会との関係では、社会的支持を受ける科学技術ということから一歩進んで、社会とともに創り進めることが強調された。13年6月の科学技術イノベーション戦略の閣議決定では、経済発展との連携が重視された。2016年1月に閣議決定された第五期科学技術基本計画は、総合科学技術・イノベーション会議への改組後の最初の基本計画である。現状をICT(情報通信技術)の進化等により社会経済の構造が急速に変化する大変革時代と捉え、世界に先駆けた超スマート社会を実現するために自ら大きな変化を起こすことを強調している。問題解決の課題としては13の重要政策を選び、持続的な成長と地域社会の自律的発展、国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現、地球規模課題への対応と世界の発展への貢献をするとしている。基盤的な力の強化のために、若手研究者の任期なしポストの拡充などの環境整備に触れていることは注目される。社会との関係については、科学技術イノベーションの推進にあたって社会の多様なステークホルダーとの対話と協働が必要であることを指摘している。なお、科学技術基本計画では、政府が支出する研究・開発費を充実するため数値目標を立てており、第一期計画では5年間で17兆円。第二期が24兆円、第三期と第四期が25兆円、第五期は26兆円となっている