科学知識は、市民生活に限らず、企業や行政の活動にも不可欠であり、初等教育から生涯教育まで、科学リテラシー(理解度)が求められる。しかし、20世紀末に至って、先進国ではその低下や軽視が目立った。日本でも、理科教育内容の削減、科目選択の自由化にともなう理科履修の減少などにより、20世紀末に向けて科学リテラシーの低下が見られた。日本に先行してこの問題を体験したイギリスでは、王立協会等が中心となって「一般人の科学理解の改善」(PUS)の取り組みを行った。日本でも、2002年度から、理工系の教育(数学も含む)を重点的に進める高等学校を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定し(16年度は総計200校)、06年度からはサイエンス・アゴラも毎年開催されている。また、ゆとり教育の中で中学校の教科書から削除された「イオン」、「周期律」といった理科教育内容も07年度より復活した。理科の学力も、改善の傾向にある。以上で論じた科学リテラシーは、主に科学の内容についての理解を深めるという意味である。これに対して、科学リテラシーとは、科学の知識自体ではなく、社会における科学のあり方について検討する能力であるという考え方もある。(→「STS」「社会技術」)