日本の基礎的学術研究を支える中核的な競争的資金。研究への助成に加えて、学術刊行物への助成も行う。資金は文部科学省と日本学術振興会によって配分されるが、大規模な研究支援を除き事業の重点は日本学術振興会に移ってきている。予算の分配に当たっては、研究者の応募書類に対して、総計6000人以上の研究者によるピア・レビューによる審査が行われる。2016年の科研費の総額は、約2300億円。2011年からは、年度を超えて研究費を支出できる基金化を実施した種目がある。科研費は、戦前の1939年に制度として発足した。その前身は、文部省が18年に基礎研究振興のために設けた科学研究奨励金制度であるともいわれる。科学史家の広重徹(1928~1975年)は、38年に陸軍大将、荒木貞夫が文部大臣となり、彼の努力によって科研費制度への発展があったとする。他方で、日本学術振興会を中核とする長老科学者たちの基礎科学振興の運動が、制度成立に影響したという見方もある。