1929年の膨張宇宙の発見と65年の宇宙マイクロ波背景放射(CMB ; cosmic microwave background radiation)の発見により、初期宇宙で物質が高温高密の火の玉状態「ビッグバン宇宙」であったことがわかった。同時に、それは空間自体が膨張するという一般相対論の見方を確証した。ここで時空の起源という新たな問題が発生し、時空の量子論の課題となった。
CMBは絶対温度2.7K(ケルビン 0K=-273.15℃)の黒体放射であり、その強度分布に10万分の1程度のゆらぎが存在する。92年の人工衛星COBEと2002年のWMAPの観測でゆらぎの地図が描かれている。このゆらぎの強度スペクトルは、スケールに依存しないハリソン・ゼルドビッチスペクトル(Harrison-Zeldovich spectrum)である。この宇宙マイクロ波背景放射のゆらぎ(CMBのゆらぎ fluctuation of CMB)はインフレーション宇宙期の場の量子ゆらぎ(→「量子相転移」)に起因すると考えられている。現在の天体構造は、この原始ゆらぎ(原始密度ゆらぎ primordial density perturbations)が重力で増幅されてできたものである。