超ひも理論の探究のなかでさまざまな理論的認識が収束して、1994~95年ごろに大きく前進したが、現在も終着点は流動的である。メンブレン(面)、マトリックス(行列)の「M」、あるいはマジック、ミステリーの「M」であるという。この前進で10年前に構築された五つの超ひも理論が、M理論でのモデルからある極限で演繹されることが示された。M理論は11次元時空での面理論をカルツァ・クライン理論(Kaluza-Klein theory 36年に発表された、高次元空間の空間コンパクト化の考えを示した最初の理論)流に10次元にコンパクト化してできるひも理論と、それらと双対性の変換で結ばれた関係にある。一般に、P.ディレクレの提案したディレクレ境界条件を満たす開いた面、Dブレーン(D brane)に端点をもつひもの振動モードとして素粒子場が表される。これらのシステムは電荷と磁気モノポール(magnetic monopole 片方の磁極のみを含む粒子)の間のようなS双対性(strong-weak duality)や閉じた空間での巻き数と固有振動の間のT双対性(target-space duality)などの豊富な対称性をもつ。ブラック・ブレーン(black brane)の時空はホーキングのブラックホールのエントロピーと状態数の関係を説明する(→「重力のエントロピー力説」)。また、Dブレーンの多体問題が行列理論で記述される。