素粒子の反応では、粒子・反粒子を入れ替えるC変換(charge transformation)、鏡に移した像に変換するP変換(parity transformation)を行った反応が同じように起こる場合に、「C変換、あるいはP変換に対する対称性が成り立つ」という。CP変換とはこの二つの変換を合わせて行うことであり、これに対して対称性が成立していない反応、すなわちCP対称性の破れが1964年に発見されている。小林-益川理論はその原因を明らかにしたものである。一方、C変換とP変換の他に時間を反転させるT変換(time transformation)を考えて、これら三つを合わせたCPT変換に対する対称性は特殊相対論にしたがう場の量子論では必ず成立することが数学的に証明されている。これをCPT定理という。したがって、CP対称性の破れのある反応では、T変換に対する対称性も破れていなければならない。2013年になり、Bファクトリーによる実験によってT変換に対する対称性の破れが検証され、CPT定理が成立している可能性が明らかになった。