長さや角度の値を変化させても変わらないような幾何的特性は、位相的な性質あるいはトポロジカルな性質と呼ばれる。数学での結び目の理論(knot theory 三次元でのひもの結び目や絡みから図形のつながり方を考える論)も位相的性質を論ずるものであるが、ひもの結びや絡みを作用素(ある状態に規則的変換を行って別の状態にするもの)で表現して、作用素の多項式と関係付けて不変量などが論じられる。一方、素粒子や多体問題(互いに力を及ぼし合う複数の物体に関する力学分野)を扱う場の量子論において、物理量は作用素であり、またその期待値の計算には遷移確率や分配関数の積分計算が必要である。そして、この場面で結び目の理論と、量子力学に特殊相対論を組み合わせて素粒子を記述する量子場の理論が密接に関連することが明らかにされており、これを位相的量子場の理論という。位相的量子場の理論は、ゼロ次元の点の集合である時空を一次元の自由度をもつ「ひも」に広げた超ひも理論のみならず、物性物理における量子ホール効果、トポロジカル絶縁体や超伝導状態などでも見いだされ、エニオン統計トポロジカル縮退、エッジ状態など、トポロジカル相特有の現象が発見されている。