スーパーカミオカンデと同じ坑道に新しく掘削された地下トンネル内に設置されている重力波検出器LCGT(Large-scale Cryogenic Gravitational wave Telescope)の愛称である。アメリカのLIGO(ライゴ)などと違って地下に設置するのは、地面の振動による影響を低く抑えるためである。長い地下トンネルに設置した3kmに相当する基線の中、レーザー光を反射鏡で行き来させ、重力波による長さの変動を検出するレーザー干渉計(laser interferometer)である。さらに熱による振動の影響も低減させるため検出器や反射鏡を20K(ケルビン 0Kは-273.15℃)まで冷却して作動する低温施設(cryogenic facility)を備え、反射鏡には低温での材料特性が優れているサファイアを用いている。また、冷凍機が振動源とならないように世界でも珍しい低振動の冷凍機が開発された。
LIGO(ライゴ)における2015年9月の「重力波の直接検出」が翌年2月の「発表」まで伏せられていた間の15年11月、日本では重力波直接観測の検出器KAGRAを岐阜県飛騨市神岡のトンネルに敷設する工事が始まったというニュースが報道された。皮肉なことに、このとき、アメリカではすでに重力波を検出していたのである。重力波の直接検出実験は日本でも1960年代から始まり、長い歴史がある。初めは振動体に共振させる方式だったが、レーザー技術の進歩を取り入れて干渉計方式に切り換え、東京都三鷹市の国立天文台に試験装置をつくって地道に発展させた。そして、本観測の3kmの腕をもつKAGRAをノイズ除去に有利な地下敷設にしたのだが、トンネル工事に時間がかかり「一番乗り」を逃した。
しかし、地球上の離れた3カ所以上の場所で観測しないと、重力波源の方向は決められない。一番乗りの発見はLIGOの2台で観測したが、3台以上で観測しないと宇宙を探る有用な道具にはならない。LIGOは3台目としてイタリアにあるEU共同のVirgo(ヴィルゴ; バーゴ)の装置を想定しているが、まだ稼動しておらず、日本のKAGRAの稼動が世界的に期待されている。近い将来、重力波は年間数十個も発見され、電波、光学、X線、ガンマ線、ニュートリノなどと連携した重力波天文学(gravitational-wave astronomy)が始まると期待されている。