結晶にその構成原子間の間隔と同程度の波長をもつX線を照射して得られる回折像の数学的処理によって結晶構造を決定する方法。1910年代にダイヤモンドやグラファイトの構造決定に始まったこの方法は、その後ペニシリンや酵素のような複雑な有機化合物の構造決定に用いられるようになり、現在では構造解析の最も重要な方法の一つであり、物質を扱う研究室に不可欠の手段となっている。最近ではSPring-8(スプリングエイト)の大型放射光装置の利用によって、構造解析の最も困難な過程である位相決定法に新しい展開をもたらし、プロテインデータバンク(PDB ; Protein Data Bank)に登録されるたんぱく質の立体構造は飛躍的に増加している。類似の回折法として、主に気体分子の構造や、固体の表面や薄膜の研究に利用される電子線回折(electron diffraction)、原子炉から放射され、X線と同程度の波長をもつ中性子線を利用した中性子線回折(neutron diffraction)などがある。