超音波(ultrasonic wave 周波数20kHz〈キロヘルツ〉以上の音波)を化学反応や溶液中の微粒子の分散などに応用する分野。水を容器に入れ、下から強い超音波を照射すると気泡が発生し、次第に成長してある大きさ(数10μm〈マイクロメートル μは10-6=100万分の1〉)になると押しつぶされる。このとき気泡内では約5000K(ケルビン 0K=-273.15℃)・約100MPa(メガパスカル Mは106=100万)もの高温高圧の反応場ができ、そこでは水も分解され、ヒドロキシラジカル「OH・」や水素ラジカル「H・」が生成して、ラジカル反応が起きる(・は不対電子を示す)。これらの現象は「超音波のキャビテーション(ultrasonic cavitation)」と呼ばれている。この反応場を利用して、触媒の合成、ナノ金属粒子の合成、有機金属試薬の調整などができるほか、さらにはベンゼンからフラーレンを、ジクロロベンゼンからカーボンナノチューブを合成することもできるうえ、環境汚染物質の分解にも応用されている。一方、超音波強度を高くすると、液面が盛り上がり、そこに微細なキャピラリー波(毛細表面波 capillary wave)が形成され、その先端が破断して数μmの液滴が発生する。この超音波霧化(ultrasonic nebulization)による霧の中に溶液が濃縮分離することが知られていて、日本酒の濃縮にも利用されている。