元来は「姿」「形」を意味する語。プラトン(Platon 前428/27~前348/47)により哲学の術語とされた。その意味は、プラトンの思索の時期によりやや異なるが、基本的には、経験される多様なものごとを、いずれもそれたらしめている、同一の本質を指す。プラトンはイデアを真の実在とみなし、その知の可能性を想起説により説明した。しかしイデアの存在性格に関しては、経験される諸物との関係をめぐり、さまざまな困難が生じる。感覚される個物を実体とみなすアリストテレス(Aristotels 前384~前322) は、イデア=形相(エイドス eidos 希)を質料(ヒュレー hyl 希)と不可分のものととらえた。
イデアの客観性は特に近代以降否認される傾向にあり、ideaという語は「観念」や「思考」を意味するものとなるが(→「主観(主体)/客観(客体)」)、「理念」(Idee 独)、「理想」(ideal)などの語にその名残をとどめている。イデアにかかわる諸問題は、普遍論争、生得観念をめぐる論争(→「合理論(合理主義)/経験論(経験主義)」)などに引き継がれた。