2006年9月、ローマ教皇(法王)ベネディクト16世は母国ドイツの大学で行った講義の中で、14世紀末のビザンチン帝国皇帝がジハード(聖戦)に関連して語った「ムハンマドが新たにもたらしたものを見せよ。剣によって自らの説くところを広めよと命ずるような邪悪と冷酷だけだ」という言葉を引用して、世界中のイスラーム教徒から反発を招いた。教皇は暴力批判のために先の言葉を用いようとしたが、イスラームの預言者ムハンマドを、暴力主義者で諸悪の根源だと説いたと受け止められかねない言葉であった。それは教皇のキリスト教至上主義の体質が露呈したものとみなされ、前教皇の故ヨハネ・パウロ2世の推進してきたイスラームを含めた他宗教との対話路線に水をさすものになった。このため、11月に予定された教皇のトルコ訪問が危ぶまれたが、イスラーム圏へ初めて外遊した。教皇はトルコのヨーロッパ連合(EU)加盟支持を声明し、イスタンブールのモスクを訪問した。