ハラールはアラビア語で合法・適法を意味し、その反対語の違法・禁止はハラームである。イスラーム法(シャリーア)では、不信仰はハラームであり、唯一神アッラー(→「イスラーム(イスラム)」)によって罰せられ、地獄に落とされる。殺人や傷害などの人身への加害、姦通、中傷、飲酒、窃盗などもハラームであり、こちらは人によって罰せられる。豚肉や死肉を食べること、利子を取ることもハラームであるが、定められた刑罰はない。しかし、ムスリム(イスラーム教徒)の間では飲食に関する戒律が厳しく守られている。クルアーン(コーラン)には「信ずる人々よ、酒、賭矢、偶像、矢占いは、どれもいとうべきものであり、サタンのわざである。それゆえ、これを避けよ。そうすれば、おまえたちはおそらく栄えるであろう。サタンは、酒や賭矢などで、おまえたちのあいだに敵意と憎しみを投じ、おまえたちが神を念じ礼拝を守るのをさまたげようとしているのである」(食卓の章90・91節、『コーラン1』藤本勝次、伴康哉、池田修訳、中央公論新社)とあり、飲酒や賭け事はサタン(悪魔)が敵意と憎悪を抱かせ、神の信仰・礼拝を妨害する行為として禁じている。 また、食については「信ずる人々よ、われらがあたえてやったもろもろのよきものを食べよ。そして、おまえたちがほんとうに神を崇めているならば、神に感謝せよ。神はただおまえたちに、死骸(しがい)と血と豚肉、および神以外の者の名によって屠(ほふ)られたものを禁じたもう」(雌牛の章172・173節、同前)、「私に啓示されたものの中には、死骸、流された血、あるいは豚肉、これは穢れであるが、あるいは神以外の名で屠られたけがらわしいもの、これらを除いては食べても禁制となるものはなにもない」(家畜の章145節、同前)と、アッラーが授けた食べ物はすべて食べてもよいが、死骸(死肉)、血、豚肉、アッラー以外の神の名を唱えて屠られた動物の肉だけは例外で、穢れているため食べることを禁じられている。これがハラームである。また、「なお、欲せずして、または違反するつもりではなくて、やむをえず食べた者には、まことに汝の主は寛容にして慈悲ぶかいお方である」(同前)と、故意でなければハラームを犯したとしても許され罰せられることはなかった。 近年、イスラーム圏への加工食品の輸出、訪日するムスリムの観光客や留学生、労働者などの増加によって、豚肉やその加工品・エキスなどが問題視され、日本でもハラールであることを認定する「ハラール認証」を受けた「ハラール食品」が広まっている。総務省中部管区行政評価局が、愛知、静岡、石川、富山、岐阜など管区内のムスリムが多い15大学と20事業所を対象にした「宗教的配慮を要する外国人の受入環境整備等に関する調査―ムスリムを中心として―」(2017年12月)によれば、大学では53.3%、事業所では35.0%がハラール食品等(ベジタリアン食を含む)を提供。アレルギー対策も含めた豚肉等の原材料表示は、大学で60.0%、事業所で25.0%が実施している。