国境や民族などの違いを乗り越え、いわゆる外国で文学活動を行う文学者たちがいる。日本では、日本人ではない外国人が日本語で書いた文学作品をこう呼ぶ。アメリカ人のリービ英雄がその代表的な存在だが、近年では在日以外の外国人で初めて芥川賞作家となった中国出身の楊逸(ヤンイー)、イラン人のシリン・ネザマフィなども登場。台湾生まれの温又柔(おん・ゆうじゅう)も、2011年1月に「来福の家」という作品集を出し、越境作家の仲間入りをした。また、日系ブラジル人の松井太郎は、10年8月、日本で「うつろ舟」を刊行した。90歳代での処女作品集である。イギリスで日系英国人の作家として活躍しているカズオ・イシグロ、日独の両言語で文学活動をしている多和田葉子も、越境文学の範疇(はんちゅう)に入れてもよいだろう。ただし、楊逸の最近の発言のように、「越境文学」という枠のなかに閉じ込められることを否定する考え方もある。(→「在日外国人文学」)