心理的問題を生ずるような行動面および認知面での適応的変化を促すことを目標とする心理療法の一種のこと。行動療法と認知療法の総称であり、治療技法をパッケージ化している。行動療法は恐怖症や強迫性障害などの不安症状を消去し、新しい適応的行動を形成することが得意で、認知療法はうつ病などをもたらす、ゆがんだ認知を現実的に修正した結果、症状を消失させることを得意とする。近年、精神疾患に対する心理支援の分野でも、支援の効果の検証とそのエビデンス(証拠)が重視されており、認知行動療法はこの点において優れていることが指摘されている。イギリスでは、臨床心理士は国家資格であるが、「科学者であり、かつ実践家であるべきという考え」に基づいているため取得が大変難しく、相談希望者に比して臨床心理士が少ない。イギリス国民の6人に1人が不安障害や気分障害に悩み、薬物療法よりも心理療法を望んでいるのになかなか心理療法を受けられない実情を改善するために、2008年から保健省は「心理療法アクセス改善プログラム」を導入し、全国152カ所の地方組織を拠点に、認知行動療法が行える心理士を国が予算を出して養成し、患者に治療を提供することにした。7年間で1万人を養成する計画である。日本においては、2010年4月よりうつ病に対する認知行動療法が保険診療化され、16年4月より新たに、社交不安障害(Social Anxiety Disorder)、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、強迫性障害(OCD)、パニック障害(PD)に対する認知行動療法が保険診療化された。