奈良県桜井市にある古墳時代前期(3世紀末~4世紀中ごろ)の大型前方後円墳(全長約200メートル)。奈良県立橿原考古学研究所が調査して、後円部頂の石室を囲む丸太垣(丸太を立てた柵)と13種81面分の銅鏡片331点ほかを発見した。丸太垣は初めての発見であり、死後の世界を区画し守る施設、鎮魂の施設、石棺を覆う建物などの説がなされている。鏡は数が多いだけでなく、三角縁神獣鏡よりその他の中国鏡が多いことに特色がある。大王あるいは外交を担った有力者が埋葬されたとみられる。石室の壁には全面に水銀朱を塗り、その量は200キログラムと推定され、これは従来知られている中で最も多い量である。当時の中国で神仙思想について記述した「抱朴子(ほうぼくし)」には、不老仙人になるための最上の薬が丹砂(たんさ 水銀朱)であるとあり、死者の昇仙を願うものであった可能性も考えられる。