福岡市西区にある元岡古墳群の中の、飛鳥時代の円墳(直径約18メートル、7世紀中ごろ)。福岡市教育委員会が、本古墳で見つかった鉄製大刀をX線で調べて、文字が象嵌(ぞうがん 削り凹めて金や銀を埋め込む手法)されていることを発見した。その文字は「大歳庚寅正月六日庚寅日時作刀凡十二果●」であり、「庚寅の年の正月六日庚寅の日に作刀し、およそ十二回鍛えた」の意味である(「鍛えた」は推定)。庚寅(こういん)とは、西暦570年とみられる干支(かんし/えと)。570年にこの大刀を製作したことがわかり、古墳時代(3世紀後半~6世紀)に、年と日の干支が併記された初めての例である。この大刀は日本製である可能性が高く、日本で暦が使われたことを示す最古の資料であり、所有者の地位や権威を示すものとして代々伝えられたと推定できる。またこの大刀が飛鳥時代に至って墓に納められたことは、古墳時代の社会の大きな転換を示している。