歌舞伎俳優の名跡。屋号は成駒屋(なりこまや)。4代目(1830~99)は立役を得意とした明治期の名優。その養子となった5代目中村歌右衛門(1865~1940)は、大正から昭和初年にかけて劇界に君臨し、その次男の6代目歌右衛門(1917~2001)も昭和後半から平成にかけて歌舞伎を代表する名女形であったが、それぞれ前名として5代目、6代目の芝翫を名乗った。7代目芝翫(1928~2011)は、5代目歌右衛門の長男で夭折した5代目中村福助(1900~33)の子として1928年に生まれる。幼くして父、祖父を亡くした後は、6代目尾上菊五郎(1885~1949)のもとで修業。古典歌舞伎と舞踊の基礎を完璧に身につける。1967年、福助から7代目芝翫を襲名。叔父6代目歌右衛門と同じ舞台に立つ機会も増え、時代物・世話物・舞踊を問わず、女形として重要な役どころを幅広くこなし、安定した実力を見せる。錦絵に見るような、いかにも歌舞伎役者らしい古風な風貌(ふうぼう)を持つ一方で、近代的な深い役作りにも定評があり、当代坂東玉三郎(1950~)をはじめ後進の育成にも力を尽くした。人間国宝。日本芸術院会員。2006年に文化功労者。08年より日本俳優協会会長。11年10月10日没。長男は9代目中村福助(1960~)。次男3代目中村橋之助(1965~)が16年10月に8代目芝翫を襲名した。