もう一つのありえたかもしれないモダニズム建築のこと。建築・都市問題を扱うギャラリー、TNプローブで企画された連続シンポジウム「オルタナティブ・モダン」では、モダニズムの変形作業に終始したポストモダニズムとは違い、壁、柱、床、屋根などの根本的な要素に立ち返って、建築のデザインを再構成する動向を取り上げた。例えば、伊東豊雄(1941~)、西沢立衛(にしざわりゅうえ 1966~)、ヨコミゾマコト(1962~)、あるいは「ニュージオメトリーの建築」展(KPOキリンプラザ大阪、2006年)に参加した藤本壮介(1971~)や遠藤秀平(1960~)である。かつての幾何学が建築に明快な秩序を与えるものだとすれば、新しい幾何学は単純なルールによって複雑な空間を実現している。オルタナティブ・モダンは、円や矩形(くけい)、一筆書きの連続する曲線などによって、多様な場を生む。