第10回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展(2006年)の日本館の帰国展。07年に建築史家である藤森照信(1946~)の建築家としての作品や、赤瀬川原平らと展開した路上観察学の成果が東京オペラシティアートギャラリーにおいて紹介された。素材や構法の紹介、縄文建築団が制作した竹と縄で編むドーム型シアター、芝の塔、温暖化により水没した時代の「東京計画2107」など、図面や模型に頼らない建築の展示手法が注目を集めた。また同時期に銀座メゾンエルメスで開催された藤森の「メゾン四畳半」展では、エルメスの社員や観客が参加して、会場に三つの茶室を実際のサイズで制作した。いずれも頭で理解するのではなく、体で空間を経験するという藤森建築らしい姿勢を貫いたものである。