建築家としても活躍する建築史家。1946年生まれ。博士論文をもとにした「明治の東京計画」(82年)では国家的な首都空間の形成を調査し、近代建築研究の集大成として通史「日本の近代建築」(93年)をまとめる一方、74年に結成した東京建築探偵団や86年に発足した路上観察学会など、街のフィールドワークは建築界の枠を超えて、話題を集めた。長野県茅野市の神長官守矢史料館(91年)によって建築家としてデビューした後は、流行とは何にも似ていない、触覚を強く刺激する独自のデザインで注目される。その作風は、場所を特定できないが、懐かしさを感じさせ、世界のどこかに存在するかもしれない民家のようだ。2006年、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館ではコミッショナーをつとめ、自らの建築作品や路上観察学の成果を展示し、世界デビューを果たす(→「藤森建築と路上観察」)。縄文建築団が制作した竹と縄で編むドーム型シアター、温暖化により水没した未来の東京計画などは、洗練された日本の現代建築のイメージを覆した。