日建設計が手がけた新しい迎賓館(2005年)。地下にサービスの機能を入れることで、全体を一層におさえ、池を囲んだ空間をつくる。だが、毒ガス攻撃を想定し、すべての廊下にはめ殺しの窓ガラスが入り、物理的に遮断される。ニッケル・ステンレス複合板で葺(ふ)いた屋根、鋼管を削った柱、22メートルもある長押(なげし)など、現代の技術が繊細な日本建築の長所を引きだす。しかし、現代建築の潮流とは外れていることや、全体的なデザインがいわゆる和風の範疇にとどまっていたことから、その評価は分かれた。2006年度の第2回日本建築大賞では大賞に選ばれたが、07年日本建築学会賞(作品)ほか、多くの賞を逃している。これは和風建築とは何かを現代において問うことの難しさを提示した作品でもある。