現代アートの文脈からも高く評価される新しいタイプの建築家。1974年生まれ。独立後、キリンアートプロジェクトに選出された作品、テーブル(2005年)は、入念な構造計算によって、長さが9.5メートルに対し、天板の厚さがわずか3ミリという驚異的なプロポーションを実現した。やわらかい紙が不意に手を切るように、常識的な素材の感覚を揺るがす作品である。また東京都現代美術館にて展示された四角いふうせん(07年)は、重さ1トン、高さ約14メートルの建築サイズのバルーンが宙に漂う。神奈川工科大学KAIT工房(08年)は、ばらばらの向きとサイズの305本の柱をランダムに散りばめ、未曾有の空間体験を生むパビリオンである。この、石上にとって初の建築作品は、09年に国内では最高の日本建築学会賞(作品)を受賞した。30代半ばという若さでの単独受賞は、1960年代以来の快挙である。ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展2008の日本館では、内部と外部の関係をあいまいにする小さな温室群と庭を設計し、世界的に高い評価を得た。そして第12回ヴェネチアビエンナーレ国際建築展2010に出品した、高さ4メートル、直径がわずか0.9ミリのカーボン製の柱が並ぶ「空気のような建築(アーキテクチャー・アズ・エア)」は、展示部門の最高賞である金獅子賞を獲得した。