くまもとアートポリスのプロジェクトとして現在進行中の熊本駅東口駅前広場の計画では、2007年のコンペで選ばれた西沢立衛(にしざわりゅうえ 1966~)案の一部が、11年3月の九州新幹線の全線開通にあわせて整備された。1054平方メートルの面積に対して、厚み400ミリという薄く大きなコンクリートの屋根の下を市電の軌道が通り抜ける。大きなしゃもじのような屋根の下には壁がなく、誰でも、どこからでも通り抜けることができる開放感をもつ。自由な形態は長丁場にわたって開発が続くことを踏まえ、デザインがフレキシブルに対応し得るとして、コンペで西沢案が選定された。こうした実験的な曲線は、近年、西沢がメンバーであるSANAAの建築でも、さまざまな試みを行っている。今後、安藤忠雄(あんどうただお 1941~)の設計による新駅舎が2018年ごろに完成すると、その建て替えに伴い、拡張した広場に他の屋根もつくられる予定である。また公開コンペで佐藤光彦(さとうみつひこ 1962~)が設計者に選ばれた熊本駅西口駅前広場も、2011年に完成した。開口部のある連続する壁でロータリーを囲み、緩やかに人と車の空間を分けつつ、外側に向かって伸びる屋根を、駅舎からバスやタクシーの乗り場まで連続させる。西沢の「屋根」と佐藤の「壁」が、駅の両サイドに新しい顔をもたらした。