ラグジュアリーブランドにおけるデザイナー交代が止まらない。この2年ほど任期満了や世代交代などの理由が続いたが、2017年以降の交代劇では、低迷が続くファッション市場に向けて、挽回を目指すブランド側の意向が強く働いた人選となった。「ディオール」はラフ・シモンズからメゾン開設以来初めての女性ディレクター、マリア・グラツィア・キウリ(元「ヴァレンティノ」)へ。ラフ・シモンズは、2016~17年秋冬コレクションからニューヨークの「カルバンクライン」のクリエイティブ・オフィサーに就任。「サンローラン」は、ブランド名まで変更したエディ・スリマンが辞任し、アンソニー・バカレロ(元「ヴェルサスヴェルサーチ」)ヘ。「ランバン」は、女性クチュリエのブシュラ・ジャラールを起用するも2シーズンで退任、2018年春夏より、オリヴィエ・ラピドスに代わった。目まぐるしい交代劇は、スターデザイナー抜擢による話題性よりも、ブランド本来の伝統や遺産の継承、マーケティング力などを重視した手堅い人事が目立つ。成功例も出てきた。「ロベルト カヴァリ」ではピーター・デュンダス辞任後は、元「ジル・サンダー」のメンズ担当であったポール・スリッジが抜擢され、ミニマル感覚で刷新した評価の高いコレクションとなった。「カルヴェン」はアレクシス・マーシャルとアドリアン・カヨドのデザインデュオがわずか1年半で辞任、後任にはスイス人デザイナーのセルジュ・ルフューを起用して大成功。新任は、「マルベリー」のジョニー・コカ、「エルメネジルド・ゼニア」のアレッサンドロ・サルトリなど。2017年最大の衝撃は、9月のコレクション直後に発表された「バーバリー」で17年間チーフ・クリエイティブ・オフィサーを担当したクリストファー・ベイリーの辞任だ。後任は「ジバンシィ」の元クリエイティブ・デザイナー、リカルド・ティッシが就任。2019年春秋コレクションから手がける。「セリーヌ」では10年間クリエイティブ・ディレクターを務めたフィビー・フィロが2018年春夏コレクションをもっての退任。2018年2月からエディ・スリマンが就任。ウイメンズのほか、これまでなかったメンズ、オートクチュール、フレグランスを統括、従来の2倍の売り上げ拡大を狙っているという。「ルイ・ヴィトン」のメンズ担当アーティスティック・ディレクターのキム・ジョーンズも2018年秋冬コレクションの直後、電撃退任。クルーズやプレなどコレクション数が増え、売り上げへの重圧など、デザイナーの負担が増す中で相次ぐ退任劇は、様々な憶測を呼んでいる。