馬は口呼吸ができないために、レース中に鼻血が出ると十分に力を発揮できないケースがある。鼻出血には打撲などによる外傷性のものと、毛細血管の破綻(はたん)や肺出血、喉(のど)の脇にある袋=喉嚢(こうのう)に真菌(カビの一種)が繁殖する喉嚢炎などの内因性のものがあり、内因性の鼻出血は習慣性となりやすい。そのために、内因性の鼻出血を発症した馬は一定期間レースの出走が禁止されている。中央競馬(→「日本中央競馬会(JRA)」)の場合、初めての出血で1カ月間、以後、2回目2カ月間、3回目からは3カ月間の出走停止となる。近年鼻出血が原因でレースに出られなかった有名馬には、オークス馬トールポピー(2008年エリザベス女王杯)、秋華賞馬レッドディザイア(10年宝塚記念)、そしてG1で7勝の牝馬ウオッカがいる。特にウオッカは09年のジャパンカップ(→「世界の大レース」)に優勝したあと鼻出血が判明し、4週間後の有馬記念出走を断念。さらに翌年のドバイワールドカップの前にも発症し、そのまま引退している。ちなみに、アメリカでは止血効果のあるラシックス(Lasix)という利尿剤を使って予防しているが、ステロイドなどを排泄するのに使われることから、日本やヨーロッパでは禁止薬物となっている。