島本和彦によるマンガ家を目指す青年の物語。「週刊ヤングサンデー」に2007年3月から08年7月まで不定期連載。同誌休刊後は「スピリッツ増刊YSスペシャル」を経て09年5月より「月刊少年サンデー」(ゲッサン)に連載中(いずれも小学館)。1980年代の大阪を舞台に、マンガへの熱い思いとマンガ家になるための方策が語られる。半自伝的な内容だ。大阪の南にある大作家(おおさっか)芸術大学映像計画学科の1年生焔燃(ほのおもゆる)は、マンガ家を目指す18歳の青年。同級生の庵野秀明、南雅彦らとともに、自らの道を模索する。当時台頭しつつあった、高橋留美子や細野不二彦らの新しいタイプのマンガに感動しつつ、独自の路線を開拓していくさまが描かれている。ここ数年、雷句誠「金色のガッシュ!!」(→「『金色のガッシュ!!』原稿紛失事件」)や西島大介「世界の終わりの魔法使い」の原稿紛失事件、あるいは佐藤秀峰の人気作「ブラックジャックによろしく」の掲載誌変更、またそれらにまつわるマンガ界の舞台裏が、文章やマンガにされたりして、マンガ家という存在が何かと話題になっている。「バクマン。」もそうだが、マンガ家の日常やマンガ家になるプロセスを描いた「マンガ家マンガ」にも秀作がいくつか現れ、ジャンルとして活況を呈している。島本の作品もその一つと言える。著者特有のパワフルな描写が若い読者の心をつかんでいる。