[一言で解説]
特別の知識や経験に属する法則を具体的事実に適用して得た判断の報告。
[詳しく解説]
証拠調べでは、証拠物の血痕が被害者のものか、また、たとえば証拠物に書かれた筆跡が被告人の筆跡かなどを調べる必要もあります。これらは、専門家による医学的、理化学的な専門知識と経験がなければ判断できません。その際に用いられる証拠調べの方法が鑑定です。鑑定の経過や結果は、鑑定人尋問や鑑定書として公判廷に報告されます。筆跡鑑定や血液鑑定のほかに、裁判でよく行われるのが精神鑑定です。被告人の犯行が「心神喪失」や「心神耗弱」状態で行われれば、罰せられなかったり、罪が軽くなるため、弁護人がしばしば責任能力を争うからです。
鑑定の信用性を当事者が争うと、再鑑定が行われることもあります。1989年の東京埼玉幼女連続誘拐事件では、再鑑定で3種類の鑑定結果が出ました。複数の鑑定結果のどれを信用するかは裁判所の自由心証(裁判官の自由な判断)に委ねられます。
このように、鑑定は、本来、裁判所が行う証拠調べの方法ですが、マスコミはもっと広い意味で「鑑定」ということばを使うので注意してください。たとえば、検察官が、起訴するかどうかを決めるために鑑定受託者に依頼する正式鑑定セイシキ,カンテイ">起訴前鑑定、司法鑑定といいます。また、起訴後に、検察官や弁護人が、おのおのの主張を立証するために、個別に専門家に鑑定を行わせることもあり、その経過や結果を記録した書面は鑑定意見書と呼ばれます。