[一言で解説]
尋問をする人が、答えてほしい内容を暗示しながら行う尋問。主尋問では禁止されている。
[詳しく解説]
証人は記憶通りに証言することが求められますが、尋問をする人が、言ってほしい答を示して誘導することによって、記憶が書き換えられたり、書き加えられたりすることで、事実認定を誤る危険性があります。たとえば、包丁で被害者を刺したところを見た目撃者に対する主尋問で「あなたは被告人が被害者を殺そうとするところを見ましたか?」と尋ねたとします。目撃したのは包丁で刺すところであり、殺意があったかどうかまで目撃者が知っているわけではありません。にもかかわらず、そうした答えを引き出すために尋ねることは誘導尋問にあたります。
刑事裁判では、主尋問や再主尋問において誘導尋問が原則として禁止されます。主尋問では、たとえば弁護人と弁護側証人のように、尋問者と証人とが友好的な関係にあるからです。これに対して、反対当事者(被告人側に対する検察側、あるいはその逆)とは友好的関係にはなく、誘導尋問の暗示に迎合して証言する可能性は低いので、記憶喚起のためなどの必要があれば、反対尋問では誘導尋問を行うことができます。