輸出を行う個人や企業に対して、政府が補助金を支払い、輸出を奨励する政策のこと。輸出補助金政策をとれば、その国が比較優位(→「比較優位の理論」)を持たず、国内価格が国際価格を上回っているような商品でも輸出が可能となる。1947年のGATTは、一次産品以外に対する輸出補助金を明確に禁止していたが、一次産品については、その実施を避けるように努めるべき旨のみを規定して、実施を禁ずる規定はなかった。この結果、農産品に対する輸出補助金の削減は、ウルグアイ・ラウンドにおける、重大な政治問題の一つとなった。問題の発端は、共通農業政策(CAP common agricultural policy 農産物共通市場設立のために導入された政策)を実施するEU(欧州連合)が、高価格を保証して政府が農産品を買い取ったために1980年代に膨大な農産品の在庫が生まれたことで、過剰在庫を国際市場で売りさばくために、EUは輸出補助金を用いた。これにより農産品の大輸出国アメリカの輸出シェアが落ち込み、アメリカ政府が輸出補助金で対抗したために、事態はアメリカ‐EU間の輸出補助金競争へと発展した。2001年11月に発足したWTO新ラウンドでも農業分野で輸出補助金の削減は焦点の一つとされているが、04年5月、EUは柔軟な姿勢を示し、アメリカとの相互削減を提案した。さらに05年4月、WTO上級委員会は砂糖に対するEUの輸出補助金が高すぎると訴えていたオーストラリア、ブラジル、タイの主張を認め、この問題でのEUの敗訴が決定した。