2001年11月14日、カタールの首都ドーハでのWTO(世界貿易機関)閣僚会議で発足が決まった多角的通商交渉。ドーハ開発アジェンダ(Doha Development Agenda)、ドーハ・ラウンドなどともよばれる。11年12月17日のWTO公式閣僚会議で「一括妥結を目指すことは断念しない。膠着(こうちゃく)状態に陥っていることは残念。近い将来、一括妥結に至る見込みは少ない」との議長総括がまとめられ、新ラウンドの包括合意は断念されることになった。今後も発展途上国支援などの特定分野での交渉は継続するが、交渉は事実上、停止状態となる。開始当初からの先進国と途上国の対立に、BRICsに代表される新興国の急速な台頭による途上国間の利害対立なども加わり、交渉が複雑化、合意を難しくした。自由貿易を通じて世界全体の経済成長を図る多国間交渉の挫折により、自由貿易交渉は2国間、複数国間の地域協定へのシフトが鮮明となった。これにより、貧しい後発発展途上国が交渉からはじかれ、発展から取り残される懸念が強まっている。また、これまで、GATTなどの多国間交渉を通じた自由貿易体制拡大を推進してきた日本にとっても、交渉断念は大きな転換点となり、経済連携協定(EPA)やTPP(環太平洋連携協定)締結の重要性が増すことになる。