2009年8月の衆議院総選挙で民主党が圧勝し、いわゆる1955年体制が成立して以後初めてのこととして、与野党間の明確な政権交代が起こった。それとともに日本にようやく安定した政治秩序が生まれ、二大政党間のほぼ定期的な政権交代が起こることになるであろうという、明るい期待が生まれた。他方、二大政党制ではなく、多極共存型民主主義論も論じられた。しかし、小沢一郎元幹事長の「政治とカネ」問題と派閥抗争、官僚主導から政治主導への転換の失敗、そして10年7月の参議院選挙で民主党が敗北したために、政権交代論の明るかった期待は幻滅に終わったかのようである。日本の政治の安定化のためには、政権交代だけではなく、他に何かが必要であることが問いかけられている。