東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所および第二原子力発電所の事故については、東京電力自らの調査委員会と民間のシンクタンクが設置した調査委員会(通称「民間事故調」)のほか、政府においても内閣官房に「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(通称「政府事故調)」を設置し、調査が行われたが、国会において政府とは別に原因究明や対策の検討を行う必要があるとして、2011年10月に制定された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法に基づき国会東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(通称「国会事故調」)が設置された。委員会は、医学博士・東大名誉教授で、元日本学術会議会長の黒川清を委員長に、9人の委員から成り、事務局のほか専門的・科学的知見を提供する参考人・参与のサポートを受け、また衆議院(衆院)と参議院(参院)の議院運営委員会合同協議会が親委員会となり、罰則付きの証言が必要なときは、委員会からの要請により、合同協議会を介して議院証言法による証人喚問が可能となる仕組みになっていた。委員会の会議は公開を基本とし、衆議院TVやインターネット動画で中継された。委員会は、関係者からのヒアリングのほか、被災者でのタウンミーティングやアンケート、海外調査を含めた活動を行い、12年7月5日に両院議長に報告書を提出した。報告書は、福島原子力発電所事故を人災として結論づけ、他の調査委員会が事故の主因をもっぱら津波による全電源喪失に求めたのに対して、安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的には言えないとした点で注目される。提言には、原子力規制機関の監視を目的とした常設委員会を国会に設置することが含まれており、これを受けて衆参は原子力問題調査特別委員会および原子力問題特別委員会をそれぞれ置いた。国会議員以外をメンバーとする委員会が国会に設置されたのは初めてのことであったが、委員長が調査結果を直接国会で説明することも、また報告書について国会で論議されることもなかった。なお13年2月、委員であった田中三彦が地震による重要機器の損傷を調査しようとして東京電力に虚偽の説明で妨害されたとして、両院議長と経済産業大臣に早急に現場調査するよう求める文書を提出し、当時の東京電力の対応が問題となった。