野田佳彦総理は、2012年3月の参議院(参院)の予算委員会で、「日本はリーダーが摩耗する仕組みになっている」と述べた。野党が「総理がころころ代わる状況を変えるべきだ」とただしたのに答えたもので、野田総理は首脳会議などに出席するため3週連続で外遊した際に、アメリカのオバマ大統領や韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が「ふらふらだ」と話していたエピソードを紹介して、「その間、彼らは国会に呼ばれていないが私は毎日だった」と述べ、日本の首相は他国に比べて国会対応の負担が重く疲弊してしまうとの認識を披露して、「リーダーが国際交渉の舞台に元気に出て行く状況をどうつくるか胸襟を開いた与野党の議論を」と提案した。この野田総理の提言を受けて、財界人や学者が日本のリーダー育成のために設立した日本アカデメイアは、同年9月「日本アカデメイア有志による国会改革に関する緊急提言について」と題した提言の中で、「総理大臣や国務大臣に国益を考え行動する時間的余裕を与える」ことを提案し、各国総理の議会出席日数または議会での発言回数について、日本の総理の国会出席日数は127日(11年1月~12月)、 フランス首相の議会での発言日数は12日(07年7月~08年7月)、イギリス首相の議会での発言日数は36日(08年12月~09年11月)、ドイツ首相の議会での発言日数は11日(09年11月~10年11月)というデータを示した。提言はまた月刊「文藝春秋」10月号に「『国会改革』憂国の決起宣言」として掲載された。このデータでは日本の総理は国会出席日数、他は発言日数(議会での発言が1回でも記録されている日数)になっているが、日本では総理が衆参の予算委員会等に出席するときは、通常9時から5時まで、昼休みの1時間を除き7時間拘束されるので、拘束時間数で比較すれば日本の総理の拘束度合いはさらに極端に多いものになる。しかも9時から委員会があるときは、総理は5時起きで答弁準備に追われるなど、その負担は尋常のものではない。自由民主党(自民党)と公明党は、これに対して他の野党とともに国会軽視と反発したが、両党が政権に復帰した後は、一転して総理大臣の国会への拘束が外交や公務に割ける時間を減らし国益を損ねているとして、総理大臣の予算委員会出席に上限を設け、代わりに党首討論を増やす国会改革案を提起し、今度は野に下った民主党が総理への追及の機会が減ると難色を示したが、14年5月、自民・公明・民主・日本維新の会は総理の国会出席の負担軽減などで合意した。